INTRODUCTION

作品紹介

パンクな“パブリック・イメージ”に埋もれがちな誠実で
ウソのないジョンの魅力あふれる映画だ

セックス・ピストルズ時代はジョニー・ロットンと名乗っていたジョン・ライドンがフロントに立つ、PiL(パブリック・イメージ・リミテッド)の初のドキュメンタリー映画である。1978年1月のアメリカ・ツアー後にセックス・ピストルズから脱退してPiL“結成”に至るまでの動きから始まり、パンクの象徴だったジョンが道を切り開いたポスト・パンクの流れもわかる作りだ。ジョンとの確執が消えない面々を含む歴代メンバーの談話シーンの数々も見どころだが、挑戦的なPiLの活動史を通してジョンの人間性をあぶり出した映画でもある。オチャメなキャラはけっこう知られていると思うが、幼少の頃のエピソードからも伝わってくる家族思いのところをはじめ、パンクな“パブリック・イメージ”に埋もれがちな誠実でウソのないジョンの魅力あふれる映画だ。

行川和彦(音楽評論家)

Kazuhiko Namekawa